八重山のサンゴ礁の保全を目指して

石西礁湖サンゴ礁基金

サンゴ礁基金について【活動のご報告】

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地球環境基金フロントランナー助成調査・研究の進捗について

 石西礁湖サンゴ礁基金では、2017年度より地球環境基金のフロントランナー助成を受けて、「複合ストレスの影響を受ける八重山地方のサンゴ礁保全・再生に向けたサンゴ認定制度の構築」の調査・研究を進めています。
 これは、八重山のサンゴ礁生態系への環境負荷を低減する、保全する取り組みを行っている事業者や産品などを認定し、それを普及・拡大していくことで、八重山地方のサンゴ礁生態系からの恩恵を持続していく仕組みを構築しようというものです。今までに以下のような成果が得られています。


◆2016年度:サンゴ礁生態系における恩恵とインパクトの関係を明らかにしました

 八重山地方のサンゴ礁生態系を取り巻くステークホルダーの恩恵と影響について、ヒアリング調査から得られた情報をもとに構造分析を行いました。その結果、サンゴ礁生態系から恩恵を受けているのは、居住者、観光客、ホテル等観光事業者、ダイビング事業者、エコツアー事業者、漁業者でした。一方、サンゴ礁生態系への負荷については、すべてのステークホルダーが大なり小なりマイナスのインパクトを与えていることが分かりました。インパクトの内容は、赤土流出、栄養塩類の排出、農薬等の化学物質の影響、過剰/不適切利用による影響、CO2等の排出による地球温暖化に伴う海水温上昇などです。
 そして、環境認証の適用可能性について概略の分析・考察を行い、肉用牛の畜産,サトウキビ栽培、パイナップル栽培、漁業、観光業などにおいてその適用可能性を見出しました。
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■掲載論文
「サンゴ礁生態系の保全・再生に関するステークホルダーの相関構造と環境認証の適用条件」
(土木学会論文集G(環境),Vol.73,No.5, I_157-I_163) 2017年(PDFファイル)

◆2017年度:先進事例として、コロンビア川流域の“Salmon Safe”の活動を調査しました

 サンゴ認定の類似の先進事例として、アメリカ合衆国オレゴン州などのコロンビア川流域で展開されている“Salmon Safe”の活動を調査しました。“Salmon Safe”は、農業などの事業活動に川の水質や流量などへの配慮を行う事業活動や製品を認証してサケの生態系の保全に取組んでおり、その活動が広がっています。
 Salmon Safeから学ぶべき点として、認証基準の作成、認証制度の運営、普及の3点に着目し、サンゴ礁生態系の保全・再生の認証制度への適用について考察しました。その結果、専門の研究者との連携、既往のマニュアルやガイドラインの活用、認証の価値の可視化と付加価値の創出、外部の協力者との連携、マーケットのインセンティブの形成、認証の先例と参加の容易性の組み合わせの工夫などが肝要であることが示唆されました。
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■掲載論文
ローカル環境認証の事例"Salmon-Safe"とサンゴ礁の保全・再生への適用に関する一考察
(第27回地球環境シンポジウム講演集)2019年8月(PDFファイル)

◆2018年度:サンゴ礁生態系に影響があるとされる栄養塩の負荷を明らかにしました

 八重山地方のサンゴ礁生態系に負荷を与えるとされる窒素やリンなどの栄養塩類を取り上げ、その発生量を主なステークホルダー別に定量的に分析・評価しました。その結果、全窒素(T-N)は、サトウキビ栽培、畜産(肉用の繁殖牛)、単独浄化槽、その他農地、パインアップル畑などからの発生源の占める割合が多く、リン(T-N)では畜産(肉用の繁殖牛)だけでその大半を占め、次いで、単独浄化槽、畜産(豚)などであることが明らかになりました。
 また、パイン栽培を対象に、サンゴ礁生態系と共生する持続可能な島産業への転換を促進するローカル環境認証制度の基準についてケーススタディを行いました。その結果、エコファーマー認定基準や沖縄県特別栽培農産物認証基準レベルの営農を行うことで、栄養塩類の低減を図れる可能性があることが分かりました。
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■掲載論文
サンゴ礁生態系に影響を及ぼす栄養塩類の負荷とその低減に向けたローカル環境認証の一考察(土木学会論文集G(環境),Vol.74,No.5, I_203-I_211) 2018年(PDFファイル)

◆2019年度:農地からの赤土流出抑制のための営農対策を分析・評価しました

 サンゴ礁生態系に影響を与えるサトウキビ栽培やパインアップル農家等の畑作農家による農地での赤土流出を抑制に向けて、その基準となるガイドラインを明らかにするため、様々な営農対策について、農家が対策を持続的に実施できるかという持続性の程度と、土壌保全の程度から分析・評価を行いました。
 その結果、サトウキビでは株出栽培が推奨すべき営農形態であり、土壌保全の程度が高く、持続性も高いことが確認されました。また、サトウキビの春植では1つ以上の対策を、夏植では深耕を行うことや2つ以上の対策を複合することが望ましいことが分かりました。パインアップルや野菜、切り花の栽培についても2つ以上の対策を複合することが望ましいことなどが明らかとなりました。
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■掲載論文
「サンゴ礁生態系の保全に資するローカル環境認証に向けた赤土流出の抑制のための営農対策の評価」(PDFファイル)
(2021年9月ごろまでは、土木学会論文集の認証番号が必要です。必要な方は当基金のメールアドレスまでお問い合わせください)


◆2020年度:フレンドシップ登録制度をデザインし、土壌保全ガイドラインを作成しました

 八重山地方のサンゴ礁生態系と共存する持続可能な産業への転換を促すため、事業者、団体、個人などがサンゴ礁生態系の保全に資する行動を普及する緩やかなスキームとして、フレンドシップ登録制度を提唱し、その制度の骨格をデザインしました。そして、イノベーター理論とキャズム理論を考慮して、その効果的な普及戦略について分析・考察しました。
 また、赤土流出を抑制する営農対策の普及とその向上を図るため、農地の土壌保全のガイドラインを整理しました。さらに、赤土流出量が多いサトウキビの夏植栽培について、対策を行わない場合の損失額を推計し、損失が少なく土壌保全の効果が高い複合対策として、敷き草+グリーンベルト,緑肥+グリーンベルト、深耕+グリーンベルト、深耕+敷き草といった複合対策が導出されました。この結果は、「八重山地方における農地の土壌保全ガイドライン(案)※」としてまとめています。
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■掲載論文
論文は土木学会論文集G(環境)Vol.74 No.5 に印刷中です
内容については弊サイト内の下記ガイドライン
「八重山地方における農地の土壌保全ガイドライン(案)」(リンク)にてご覧いただけます


 

 
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