八重山のサンゴ礁の保全を目指して

石西礁湖サンゴ礁基金

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「八重山の海と島のフォーラム」を開催しました。


 4/24(日)午後、八重山うみしまフレンドシップ※のキックオフ・フォーラム「八重山の海と島のフォーラム」を開催しました。オンラインと会場の合計で約70名の方々に参加していただきました。

※八重山うみしまフレンドシップ
https://umishima.net/

◆「八重山やいまうみしまフレンドシップ」の紹介
まずは、石西礁湖サンゴ礁基金理事の宮本善和から、八重山地 域のサンゴ礁が育む豊かな海と島を守る人の輪を育み、広げていく「八重山うみしまフレンドシップ」について、その内容、シンボルマーク、登録対象の取組・行動、目標などについて紹介しました。 八重山で海やサンゴ礁を守る行動や、海の環境への負荷を少なくする取り組みをされていたり、これから始めようとされる事業者、団体、個人を広く募集し、「八重山うみしまフレンドシップ」として登録します。そして、参加者の情報交換をしながら交流を育みつつ、輪を広げていきたいと思います。さらに、望ましい行動のガイドラインを次第に作成して提供することで、行動のレベルアップを促していきます。 八重山うみしまフレンドシップは、今年の4/1にキックオフし、専用のWeb サイトで募集を始めています。現在、30人・団体に登録を頂いています。今後、2032年までの10年間で八重山の人口の3.5%※の2000人・団体を目指して進めていきます。 ※ハーバード大学の研究者によれば、プロジェクトの賛同者数がそのコミュニティの3.5%に達すると浸透すると言われています

フォーラムの中では、2題の応援講演と、7名の方からフレンドシップに関連する取組の紹介を頂き、最後にディスカッションを行いました。

◆応援講演「八重山の海の変化と私たちができること」

 長年、八重山の海の中を見続けてこられた吉田さん(石西礁湖 自然再生協議会副会長)に、「八重山の海の変化と私たちがすぐできること」について講演をいただきました。
 吉田さんは、 八重山のサンゴの脅威のベスト3として、@サンゴの大白化、Aオニヒトデの大規模発生、B有害な陸水(赤土、畜産排水、生活排水、農薬など)の流入をあげられ、サンゴ移植では今まで効果が出ておらず、一番いいのは海域を健全な状態に保つことと指 摘されました。
 そして、八重山うみしまフレンドシップで登録・募集しているように、まず手軽なものから始めて日常化することで、他人の幸せが自分の幸せと強く感じるようになると強調され、「世界を変えていくのは組織ではなく、個人の意志である」と締められました。


◆応援講演「サンゴ礁文化の継承と持続可能な地域づくり」
続いて、上村真仁さん(筑紫女学園大学現代社会学部教授)に「サンゴ礁文化の継承と持続可能な地域づくり」という講演を頂きました。
 八重山のサンゴ礁の海の恵みとして、集落を守り、民具の材料として活用されてきた海岸の植生の存在、サンゴ礁の防波堤の効果、サンゴ礁がつくった段丘地形と土壌の存在、薬として利用されてきた海藻や海洋生物、建材としてのサンゴの利用、祭事や神事とのつながり、観光利用、研究や学習の利用などについて紹介を頂きました。
 そして、里海の概念や人と自然の共生地域(OECM)について解説されました。その上で、八重山うみしまフレンドシップによるサンゴ礁保全(環境保全)とともに、伝統文化の継承(社会・文化)や暮らし向きの向上(経済)を統合的に取り組むことが大事だと指摘され、そのような例として、サンゴ礁保全につながる地域特産品の開発、グリーンベルト植物の活用、サンゴ礁保全に資するツーリズム展開などを紹介されました。

◆八重山地方の持続可能な地域づくりに向けた取り組み

◇八重山青年会議所第60代理事長の国仲恵亮さんは、青年会議所60周年記念事業で赤土防止のためにひまわりの種を植えるイベント「2030やえやま大作戦」を開催したことを紹介されました。インスタグラムで未来に残したい八重山の写真を募集し、その写真投稿数に応じてひまわりの種を購入して実施したとのことです。

◇西表島エコツーリズム協会事務局長の徳岡春美さんからは、八重山うみしまフレンドシップの登録対象の項目と関連づけて、実施されてきた素晴らしい取組の数々を紹介いただきました。具体的には、石けん製品の販売・普及、ビニール包装を減らす、バガス容器の利用促進、ビーチクリーンの運営サポート、環境学習としてのサンゴスタディプログラム、サンゴの分類と同定ワークショップなどが紹介されました。

◇石垣島アウトフィッターユニオン会長の大堀健司さんは、八重山うみしまフレンドシップによる行動は当然のこととして、環境保全に加え、安全対策、地域共生の3つをテーマに行うことで、持続可能で良質な観光プログラムを開発してきていると話されました。例えば、平久保半島で催行された「化石燃料を使 わない3日間のサスティナブルツアー」では、カヌー、サバニ舟、クライミング、トレッキング、乗馬、ビーチクリーンを組み合わせて実施したとのことです。

◇元WWFジャパン国際サンゴ礁研究センター長で、喜界島サンゴ礁科学研究所研究員の鈴木倫太郎さんからは、喜界島のサンゴ礁文化として、サンゴの石垣、灯籠、隆起サンゴ礁の地形を活かした追い込み漁などを紹介され、サンゴ礁文化を起点とした集落活性化の取組を説明されました。そして、「地域のプラットフォームとしての機能」として八重山うみしまフレンドシップの役割と可能性に期待すると締めくくられました。

◇ダイビングサービスWAKE UP CALL代表の兼本光恵さんは、フサキ沖から大崎沖のサンゴを復活させる「美らんど」の取組として、海岸・海中のゴミ拾い、汲み取り式のマリントイレなどを紹介されました。また、ダイビングサービスWAKE UP CALLでは、ダイビング船で、プラスチック食器を使わないランチを21年間にわたり提供されてきたことも話されました。さらに、今後は、グリーンベルトの普及、家畜糞尿の低減などの取組をしていくとのことです。

◇株式会社花谷農園の花谷まゆさんは、人と環境にやさしい農業として、窒素肥料なし、農薬なし、除草剤なし、水やりなしの炭素循環農法(たんじゅん農)について紹介されました。この方法は、土壌微生物が団粒構造を作るため、水はけが良く水持ちの良い土づくりができるとのことです。農薬散布や防除をしなくていいなど労働時間が減る、甘くて美味しい野菜が採れる、土に雨が浸透するため土壌流亡を防ぐなどの利点を強調されました。また、さんごにやさしい八重山ローカル認証として始められた「コラコラ認証」によって、環境に優しい経済循環をつくっていきたいとの話がありました。八重山うみしまフレンドシップとコラコラ認証の協働を育んでいきたいと思います。

◇竹富島地域自然資産財団常務理事の水野景敬さんは、サンゴ礁と人の営みが美しい竹富島の農村集落景観を育んできたことを紹介されました。そして、入島料の導入によって美しい集落を持続するための取組について話されました。さらに、健康な島と海を持続していくには、島の土と緑と海の生きものとのつながりを保つこと、海をサンゴに適さない水質まで悪化させないことが必要であるとされ、この海の下にたくさんの生き物たちがいることを考え行動することを説かれました。

◆ディスカッション

その後のディスカッションでは、@サンゴ礁保全のためにわたしたちができること、A八重山うみしまフレンドシップを普及していくために何ができるかについて意見交換が行われました。

 @については、関心があることから1つでも多くやっていくこと、多くの分野の方が関わっていくこと、地元のものを選ぶことを意識していくことなどが大事という話がありました。
 Aについては、フレンドシップはだれでも参加しやすい制度なので可能性がある、参加して勉強したり話し合えたりできるようになれたらいい、八重山に限らず広い地域の方々に参加してもらうなどの意見がありました。さらに、八重山の住民は海に関心がある人ばかりではないが様々な場所で問題点を話しあいながら思い切って新しいことをやることも大事である、行政が率先して様々な事業で環境配慮やサンゴ礁との親和性を高めれば主流化につながるのではないか、YouTubeを活用して発信していくことがいいのではいかなどの意見も頂きました。

「八重山うみしまフレンドシップ」は、2032年までの10年間で八重山の人口の3.5%※の2000人・団体を目指して普及活動を進めていきます。近々、普及のための資金を求めてクラウドファンディングを行う予定です。ぜひご支援もよろしくお願いします。

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